原真人・朝日新聞編集委員「アベノミクスは『雨乞い』のようなもので論理的な根拠はない」⇒ 林田晃雄・読売新聞論説委員「他山の石にしたい朝日新聞の『印象操作』… 論理的な根拠はないのは原氏のほうではないのか」「エビデンスに基づく冷静な報道の重要性を再認識した」

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他山の石にしたい朝日新聞コラムの「印象操作」

これまで以上にデータとエビデンスに基づいた論評に努める必要があることは間違いない。

そんなことを考えていたら、かつて違和感を覚えたある新聞記事を思い出した。9月16日付の朝日新聞朝刊13面(東京本社版)に掲載された、原真人編集委員のコラム、多事奏論「禁断のアベノミクス 負の遺産残した『雨乞い』」である。

この記事では、原氏が2012年12月に書いた1面記事で、大胆な金融緩和など「3本の矢」を掲げた安倍前首相の経済政策を、「アベノミクス」と呼んだことを紹介。その狙いは「大量のお金を世にばらまくヘリコプターマネー政策のいかがわしさを表現したかったからだ」とし、「まさか首相がその後、みずから好んで『アベノミクス』を使うようになるとは予想もしていなかった」と皮肉っている。

アベノミクス批判

 問題はここからである。原氏はアベノミクスについて「この政策を国民はなぜ受け入れ、経済界はなぜ成功と持ち上げたのか。ひとえに円安、株高の進展と堅調な雇用のせいだろう」と分析する。確かに安倍氏は首相時代、アベノミクスの成果として、しばしば雇用情勢に言及した。雇用改善について原氏は、「こちらは人口の構造変化が大きな要因だ。ここ10年で生産年齢人口(筆者注=15歳から64歳までの人口)は640万人減った。どんな政権のもとでも労働力不足は起きていただろう」とし、人手不足で仕事が余ったのだから、別にアベノミクスが行われなくても、雇用情勢は改善したはずだと論じている。世界経済と日本経済が好況期を迎え、人口構造の変化が雇用を好転させ始めた。まさにそのタイミングでアベノミクスが始まっただけで、「要はツイていたのだ」と。

 原氏は、「結局、アベノミクスとは雨乞いのようなものではなかったか。首相はアベノミクスというおまじないで『雨よ降れ』と天に向かって祈り続けた。幸い雨は降った。みな驚いて『効果があった』と喜んでいるが、そこに論理的な根拠はない」と切り捨てている。安倍政権に終始批判的だった朝日新聞らしいコラムではある。

この記事に引っかかったのは、生産年齢人口は確かに減っているが、労働力人口の方は増えていたからである。労働力人口とは、15歳以上で、働く意思と能力のある人をいう。そのうち職についている人は「就業者」、仕事にあぶれている人は「完全失業者」と呼ばれている。労働力人口に占める完全失業者の割合が、雇用の重要指標である失業率だ。

 実は労働力人口が増えると、失業率は上がりやすくなる。分かりにくいので、単純化したモデルで説明しよう。例えば人口2000人の村があったとする。全員が大人で、半分の1000人に働く意思と能力があり、10人は失業中である。

 この場合、労働力人口は1000人、失業者は10人なので、失業率は1%になる。ところがある日、新たに100人が一斉に「私も外で働きたい」と言い出した。そうなると労働力人口は1100人に増える。ただ、この100人は求職中で働いていないから、失業者は10人から110人に増える。失業率は「110÷1100」で10%となる。1%から一気に10倍に上昇する計算だ。

 働きたいと言い出した100人のうち、99人が就業できれば、失業者は1人増の11人となり、失業率は元の1%に戻る。いずれにせよ、労働力人口が増える中で失業率を下げるには、たくさんの新規雇用が必要なことが、分かっていただけただろうか。

データで見る雇用改善の論拠

 では、統計データに基づいて検証しよう。アベノミクスの経済的な効果に関して調べるのだから、新型コロナウイルスの影響は排除したい。そこで、検証期間は第2次安倍内閣が発足する直前の2012年11月と、コロナ感染が中国・武漢で報告される直前の2019年11月の7年間とする。月が同じなら、季節要因による統計のぶれもないので都合がいい。

 総務省の労働力調査によると、生産年齢人口はこの間、約500万人減って、7500万人になった。原氏は「ここ10年」で640万人減ったと書いている。当方は7年間が対象だから、それほど大きな食い違いはない。

 一方、働き手の人数である労働力人口は逆に、7年前より約360万人増えて、6900万人になった。原氏が指摘したように生産年齢人口は減った。しかし、働きたいという人は逆に増えたのである。とりわけ、女性は290万人増、65歳以上の高齢者は約300万人増と伸びが大きい。アベノミクスによる「女性活躍の推進」や「高齢者の雇用機会拡大」が、功を奏した面もあるのではないか。

 労働力人口が増えれば、失業率が上がりやすくなることは既に説明した。にもかかわらず、実際の失業率は4.1%から2.2%へと大きく下がった。理由は、アベノミクスの実施期間に、職についている人(就業者)が460万人以上増えたからだ。原氏が主張する、「人口が減ったから、たいして仕事がなくてもみんなが働けるようになった」「経済政策が無策でも、雇用環境は良くなったはず」という論旨は筋が通らない。

 統計数字を読み解けば、雇用情勢が改善したのは、原氏の言うように生産年齢人口が減ったからではなく、日本全体で仕事が増え、職につける人が増えたからだと考えた方が自然だろう。「論理的な根拠はない」のはアベノミクスの効果ではなく、原氏の論考ではないのか。主張したい論旨に沿ったデータばかりを取捨選択し、アベノミクスは失敗だったと「印象操作」する狙いだったとすればフェアではない。ここは自戒も込め、エビデンスに基づく冷静な報道の重要性を再認識したい。

全文はリンク先で

 林田晃雄(はやしだ・あきお) 経済部次長、論説委員、論説副委員長を経て現職。バブル崩壊に始まる激動の平成経済を取材。専門分野は金融・証券、マクロ経済、エネルギー政策など。
https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckeconomy/20201014-OYT8T50044/





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