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「耳を貸さなかったのは河野太郎氏ではないか」マイナカード普及”暴走”の代償
略
デジ庁「暴走の代償」
マイナンバーカードをめぐるトラブルに歯止めがかからず、デジタル庁が窮地に立たされている。
河野太郎デジタル相は多少の混乱は覚悟で、マイナカードの普及を急いできた。その典型例が保険証との一体化案だ。マイナカード普及の決め手とされるが、各地に拠点を持たないデジタル庁は厚労省の地方機関や自治体に実務を頼らざるを得ない。
庁内を取り仕切る赤石浩一デジタル審議官(60年、旧通産省)はその弱点をよく分かっていたが、河野氏を止めることはできなかった。
赤石氏は若手の頃から、資源エネルギー庁長官だった髙橋泰三氏や元経産審議官の田中繁広氏らと並び、同期のエース級として知られ、米州課長や会計課長を務めた。5年ほど前に内閣府の科学技術・イノベーション担当になり、デジタル庁の官僚トップに起用された。
赤石氏を支える官房長役である財務省出身の冨安泰一郎戦略・組織グループ長と、医療・教育など「国民向けサービス」を担当する村上敬亮グループ長(旧通産省)はともに平成2年入省組だ。「2人とも逆風が強まってからも後輩たちを元気づけている」(課長級)と庁内で頼りにされている。
赤石デジタル審議官ら官僚群と、民間から起用した非常勤の専門家を束ねるのは、東芝や情報処理会社で経験を積み、ソフト、ハードの両面でシステムや言語スキルを身に付けた浅沼尚デジタル監だ。
河野氏は岸田文雄首相らに対し、デジタル庁の態勢強化を働きかけている。人員を現在の約800人からさらに増やすことに加え、総務省の自治行政局や厚労省からの出向を要請しているという。
だが、他省庁からは「デジタル庁だけが突っ走っても、国民全体に行き渡るサービス網はつくれないと、繰り返し訴えてきた。耳を貸さなかったのは河野氏ではないか」と反発の声が渦巻いている。
「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2023年8月号
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